住宅の耐震性に注目が高まる昨今、住宅を下から支える基礎にひび割れ(クラック)を発見したとあっては、大きな不安を感じてしまうのは当然だといえます。
- 基礎のクラックが発生する原因
- 基礎のクラックを防ぐには?
- 火災保険の活用で費用が軽減できるかも!?
クラックはなぜ発生するのか?
クラックは乾燥や経年劣化、地震などの揺れで生じる
クラックとは亀裂やひび割れのこと。外壁のほかに内壁や基礎部分に生じるほか、モルタルやコンクリートの床、外壁材のつなぎ目に使う目地(コーキング)にできることがあります。
クラックができる原因は主に(1)乾燥(2)経年劣化(3)揺れ(4)材料の馴染みが悪い、の4つがあります。■クラックができる原因
(1)乾燥
・モルタルやコンクリートなど水を使う外壁材が、乾燥して生じる
・外壁の表面を覆っている塗膜(塗料が乾燥して固まり、膜状になったもの)が、乾燥が進んでひび割れが生じる
(2)経年劣化
・サイディングボードやタイルなどのつなぎ目をふさぐ目地(コーキング/シーリング)が、紫外線によって劣化することで生じる(サイディング自体の劣化でクラックが生じることはない)
・サイディングボートを止めているくぎの止め方の不具合から生じる
・外壁の塗料が、紫外線によって劣化することで生じる
(3)揺れ
・地震などの揺れによって力が加わり、コンクリートやモルタル、タイルなどの外壁材が耐えきれない場合に生じる
・サイディングボードやタイルなどのつなぎ目をふさぐ目地が、地震などの揺れに耐えきれない場合に生じる
(4)材料の馴染みが悪い
・モルタルを塗る際、一度乾いてしまった部分に再度塗ると、馴染みが悪くて(一体化しなくて)クラックを生じる可能性がある
・塩化ビニール系素材とモルタルのように、馴染みが悪い材料を使った場合に、クラックを生じる可能性がある
しかし、ひび割れにも様々な種類があり、基礎を補修すべき場合とそうでない場合があるのをご存知ですか?
もし補修のタイミングや劣化症状の見分け方を知らなければ、強引な営業により不必要な工事をすることになってしまうかもしれません。お家の基礎の状態をある程度ご自分でチェックできるようになっておけば、劣化具合に応じた適切な対処をすることが可能です。
そこで本記事では、基礎のひび割れに関する基礎知識や、補修の目安となる劣化症状の一覧、業者選びの際の注意点などをご説明させていただきます。この記事を読んで、基礎のひび割れ補修に関する正しい知識を身に着けて頂ければ幸いです。
まずは基礎のひび割れについて詳しく知ろう
劣化症状や補修工事の進め方などの詳しい説明に入る前に、まずは基礎のひび割れの原因や、ひび割れが引き起こす問題について詳しく解説させていただきます。
そもそも基礎のひび割れはどうして起きる?
基礎にひび割れ(クラック)が発生する主な原因は以下の通りです。
・乾燥収縮
基礎のひび割れの原因としてもっとも多いのは、乾燥によってコンクリート内部の水分が蒸発することで基礎が収縮する現象です。住宅の基礎のようにコンクリートが固定されている場合、乾燥収縮によって引っ張られたコンクリートが、耐えきれずひび割れてしまうのです。
・気温変化
コンクリートは温度が急激に下降すると縮む性質を持っており、その際に発生した力がコンクリートの引張強度を上回るとひび割れが発生してしまいます。夏場に施工された基礎などによく起きる現象です。
・不同沈下
地盤が弱い場所に建つ家で発生する可能性がある現象で、住宅が斜めに傾くことで基礎が建物を支えきれなくなり、ひび割れが発生してしまいます。程度によっては、日常生活に支障をきたしたり、住宅そのものが倒壊してしまう危険もありますので注意が必要です。
・地震
よほどの大型地震でもなければ、深刻なひび割れが発生することは少ないです。地震のあとに大きなひび割れが発生している場合は、基礎に何らかの問題がある可能性を疑ってみることをおすすめします。
・施工不良
コンクリートのかぶり厚さ(鉄筋から表面までの厚さ)の不足や、強度不足など、基礎を施工する際に問題があった場合にもひび割れは発生してしまう可能性があります。
・コンクリートの中性化
コンクリートは吸水性の高い素材であるため、雨や大気中の二酸化炭素に長い間さらされると内部のカルシウム化合物が中性化してしまう現象が起きてしまいます。鉄筋を保護していたアルカリ性のコンクリートが中性化してしまうことで、鉄筋が錆びて膨張してしまい、その結果ひび割れが発生してしまうのです。
放置すると鉄筋の錆や地盤沈下の可能性も
基礎に発生したひび割れを放置すると、どのような事態を招くのでしょうか?
まず最初に警戒しなければならないのは、ひび割れから雨水がコンクリート内部に浸入することで発生する鉄筋の錆。構造に影響を与えるほどではない幅0.3mm以下の「ヘアークラック」であっても、雨水の浸入は起こり得るため注意が必要です。
また、深刻なひび割れを放置すると基礎の強度が低下してしまい地盤沈下が発生する可能性があります。住宅の重量を基礎が支えきれなくなり傾いてしまうのです。後ほど紹介する重大な劣化症状に、あなたのお家の基礎が当てはまる場合は、まず業者に診断を依頼することをおすすめします。
クラックを防ぐには?
(1)乾燥や(2)経年劣化に対しては、それを前提とした10年ごとの再塗装など、定期的な点検・修繕計画が組まれているはずです。こうした定期メンテナンスをきちんと行うことでたいていは防ぐことができます。
「モルタルなど水を使う外壁材などは、雨水による膨張と乾燥による収縮を繰り返すことで劣化が進みやすくなります。かつての日本家屋のように軒が長ければ、それらを防ぐことができるのですが、最近は敷地の有効活用のために建物を目一杯の広さで建てる場合が多く、そうなると軒を長く取れなくなります。そのため劣化が進みやすくなるので、軒の短い家は日ごろからクラックができていないか気に掛けていたほうがいいでしょう」
ちなみにかつての日本家屋は軒が長いからこそ、白い漆喰の壁を使うことができたのだそうです。それだけ軒は外壁の劣化を防ぐ役割を果たしているというわけです。
また、(3)揺れを原因とするクラックに対して、最近はモルタルも強くなっているそうです。「モルタルの下地には、かつては金属製の網が使用されていましたが、最近はさらに目の細かい樹脂製を使うようになったため揺れをうまくいなせるようになったことが一因です。また地震の揺れは建物の角や窓の角などに力が集まり、そこからクラックを生じやすいのですが、その対策として下地の網の張り方を工夫することで、クラックを生じさせない施工技術が普及してきています」
一方、地盤が軟弱で建物の一部が沈み込む(不同沈下)などして建物自体が歪み、クラックを生じるということもありますが「2009年に住宅瑕疵担保履行法が施行されてからは、実質的に地盤調査が義務化されました。そのため現在の家は地盤調査が行われて、それに応じた土地改良が行われるので、ひと昔前と比べたら不同沈下が減り、クラックも生じることが少なくなりました」
(4)の材料の馴染みが悪いことによるクラックは稀なケースですが、もしそれが原因であれば、最初からやり直す必要があります。
基礎を補修すべきひび割れの種類一覧
ここからは、基礎を補修すべきひび割れの状態を写真付きで解説させていただきます。業者に相談する前に、ご自身でチェックする際の参考にしてください。
幅0.3mm、深さ4mm以上の「構造クラック」
幅0.3mm以上、深さ4mm以上の「構造クラック」と呼ばれるひび割れが発生している場合は、基礎を補修が必要です。構造クラックは「貫通クラック」とも呼ばれ、ひびが表面だけでなく内部の鉄筋まで届いてしまっている非常に危険な状態です。雨水の侵入によって鉄筋が錆びてしまうだけでなく、ひび割れが広範囲に広がってしまい、最悪の場合地盤沈下を招いてしまう可能性があります。換気口の角の部分に発生しやすいので、ぜひチェックしてみましょう。
同じ場所にある複数の微細なひび割れ
たとえ小さなひび割れであっても、限られた範囲内にいくつも発生している場合は注意が必要です。1m以内に3つ以上のひび割れがあるかどうかを目安とし、あまりに多くのひび割れが発生している場合は基礎の構造への影響が疑われるため、プロによる診断を検討してみた方がいいかもしれません。
基礎の高さいっぱいまで伸びているひび割れ
基礎を上から下まで横断して伸びているひび割れには注意が必要です。たとえ幅が小さなヘアークラックであっても、そのような場合は早めに補修を検討することをお勧めします。
水平方向に走るひび割れ
あなたのお家の基礎に発生したひび割れが、写真のように横方向に伸びていた場合、設計や施工に何らかの問題を抱えている可能性があるかもしれません。
1章でも述べた通り、基礎にひび割れが起きる原因としてもっとも一般的なのは、乾燥や温度変化によって生じるコンクリートの収縮です。ひび割れは縦方向に発生することが多く、そのほとんどが構造に影響を与えるほどではないヘアークラックです。しかし、横方向や斜めに伸びるひび割れは大きな力が基礎に加わることで発生します。
しっかりと施工された基礎であれば、多少地震が起きた程度ではクラックが発生することはありません。上記ようなひび割れがある場合は住宅の構造に何らかの問題がある可能性があります。信頼できる業者に一度相談してみるといいでしょう。
基礎コンクリートの破裂・滑落
小さなひび割れを長期間放置してしまうことで発生するのが、基礎コンクリートの破裂・滑落です。ひび割れがどんどん広がってしまい、内部への水の浸入を防ぐことが難しくなってしまうばかりか、放置すると地盤沈下のリスクも大幅に増加してしまいます。基礎のひび割れがこの写真のような状態になる前に補修しておくことをおすすめします。
雨染みの発生
基礎のコンクリート内部に雨水が浸入していることを示すサインとしてもっともわかりやすいのが、ひび割れ周囲の雨染みの発生です。酷い場合は内部の鉄筋のサビ汁が溢れてしまっている場合もあり、基礎の強度への影響が懸念されます。そもそもコンクリートそのものには防水性がありませんので、ひび割れがない箇所にも雨染みが発生する可能性が十分にあります。
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