モルタル下地の外壁に細かいひび割れが入っていたのが目立ってきて、補修しようか迷っている。
モルタル下地を塗装するときにはどんな方法があるのか?など疑問も多いと思います。
- モルタルの特徴(概要)
- モルタル下地外壁の劣化症状とメンテナンス時期
- 火災保険の活用で費用が軽減できるかも!?
モルタルの特徴
サイディングボードは工場出荷時に塗装を行っているため現場での塗装は行わないのに対し、モルタルは仕上げに現場での塗装が必要になります。サイディングに比べ仕上げ方法が非常に豊富であるため、塗料の種類や仕上げ方によってさまざまな風合いを作り上げることができます。
ただし、工場生産(製造~仕上まで一貫)のサイディングボードに比べ、モルタルの場合は全ての工程を現場で施工するため、作業者によって品質にムラができやすく、強度や耐久性・仕上げ塗装の性能等に後々問題が生じるなど、一定の品質を保つには施工時の品質管理が重要になります。
意匠性に優れるモルタルではありますが、何らかの不具合(ひび割れ、漏水、浮き、塗膜剥離等)が起こるリスクは、サイディングボードよりも少々高くです。
最近の大手ハウスメーカーで標準工法としてモルタル壁を採用するのは極めて少数となっており、サイディングやガルバリウム、タイルなどを標準工法とするハウスメーカーが現在大半です。モルタル自体は水を通しにくいですが、亀裂の問題があるので、施工後に塗装を行います。
施工の手順として、構造材の上にラス板を固定し防水シートを張る。その上に金網をタッカーで固定し、そこにモルタルを塗っていく。モルタルは2層塗りが標準工法であり、クラック防止にネットを伏せ込むのが標準的工法である。また角についてもクラック防止に下地を練りこむ。モルタルが完全に乾燥したのちに、漆喰や樹脂などによって塗装を行います。塗装も通常2回以上塗られることが多いです。
利点
・下地サイディングのように継ぎ目が浮き出ない。このため塗壁の正規の工法として確立している。
・ガルバリウムのように熱くならない
・コーキングによるジョイントがない
欠点
・材料費や人材費が高い
・施工期間が長い
・熟練した職人が必要
・天候などによる経年劣化に起因するひび割れ(クラック)が生じやすい
・重い
現在の建売住宅等では上記内容からモルタルではなく、窯業系サイディングを使用する事が施工性、コスト面からでも一般的になっております。
モルタルはセメントと砂と水を練り混ぜて作られます。セメントが含まれているため非常に丈夫なイメージがありますが、実は、モルタル自体の防水性能は低いのです。そのため、モルタル外壁の表面に塗装をすることで防水性をもたせています。この塗装が劣化してくると、徐々に水分を吸収していき、様々な劣化症状がでてきます。
ですから、建物を長持ちさせるには塗装によってモルタル下地の外壁をしっかりとメンテナンスをすることが大切なのです。
モルタル下地外壁はひび割れが起きやすいため、塗装時にはひび割れを覆うことができる弾性塗料が使用されます。工法には単層弾性と複層弾性があり、一般的には複層弾性の方が耐久性がありますが、単層弾性にも複層弾性並の弾力と耐久性を持つ塗料もあります。
モルタル下地の外壁塗装を成功させるには塗料や工法の知識も必要です。
この記事では、モルタル下地の塗装によるメンテナンスについての基礎知識や塗料の選び方、DIY方法や注意点についてお伝えします。
モルタル下地の塗装の基礎知識
モルタル下地の外壁と一言でいっても、仕上げの方法にいくつかの種類があります。
この章では、それぞれの特徴と塗装方法について解説します。
一昔前までは、下塗にシーラー、上塗にアクリル樹脂単層弾性という組み合わせが主流でしたが、現在は下塗に微弾性フィラー、上塗に水性アクリルシリコン樹脂という組み合わせが主流になっています。この仕様の特徴は、旧塗膜表面の微細なひび割れ、巣穴などを下塗材1回塗りでカバーできることに加え、上塗材を目的(高耐久・低価格・低汚染など)にあわせ選択することも可能になります。
モルタル下地の仕上げの種類
リシン仕上げ
粒状に砕いた石にセメントや樹脂、着色剤などを混ぜたものを吹き付けて仕上げる方法です。古くからある仕上げ法で、1970年〜80年代にかけてモルタル下地の外壁の仕上げ材としてよく使われました。
独特の落ち着いた雰囲気がありますが、表面に汚れがつきやすい点から近年の新築住宅の外壁ではあまり使われなくなっています。
セメント、合成樹脂エマルションなどと骨材(石)を混ぜた原料を吹き付けたり、特殊なコテで塗りつけたり、ローラーを使って表面に凹凸を付けて仕上げる方法です。もともとスタッコとは化粧漆喰という意味で、消石灰に大理石の粉や粘土粉を混ぜたものを指していましたが、近年ではモルタルセメントを用いた方法が主流になりました。
吹付けタイル仕上げ
モルタル下地の外壁塗装の流れ
モルタル下地の外壁塗装の工法には単層弾性塗料、複層弾性塗料、微弾性塗料等があります。
従来のモルタル下地の外壁塗装は下塗りにシーラー、上塗りにアクリル樹脂系仕上げ材という組合わせが多かったですが、近年では下塗りに微弾性フィラー、上塗りに水性アクリルシリコン樹脂という組み合わせが増えています。微弾性フィラーは下塗りで小さなひび割れをカバーし、上塗りは目的によって高耐久性の塗料などを使用できるというメリットがあります。

■ローラー塗装
■吹付け塗装
リシン仕上げの塗装方法
下地処理を行った後にシーラーと呼ばれる接着剤のような役目を果たす材料を塗ります。その上から吹き付け塗装器具などでリシンを2回吹つけます。
スタッコ仕上げの塗装方法
作業的にはリシンとほぼ同様です。
吹付けタイル仕上げの塗装方法
玉吹きにて玉状に壁に凹凸を付ける吹き付け方法をした後に、仕上げにアクリル・ウレタン・シリコン・フッ素などの上塗りを塗ります。
これらは層を重ねて仕上がるので、複層型と呼びます。
※玉吹きの際の材料に、すでに色も着色されており、吹けば完了する材料も存在し、それらは単層型と呼び、それらの材料は単層弾性塗料と呼びます。
■ジョリパットなどの左官仕上げの塗装方法
まずは、ひび割れなどの劣化部分を補修しますが、クラックが多い場合は②はシーラーではなく微弾性フィラーを選択します。
次に塗装ですが、左官仕上げの場合は、塗料の選定に注意が必要です。トラブル防止の為にジョリパットならジョリパットフレッシュ、ベルアートならアートフレッシュという同じメーカーが出している専用の塗料を上塗りします。
モルタル下地の外壁を塗装する場合の注意点
塗装で仕上げの風合いが無くなってしまう場合がある
リシン仕上げやスタッコ仕上げなど独特の風合いのあるものに塗装を行うと、塗膜によって凹凸が無くなり、元々の風合いが無くなる場合があります。どうしても元の風合いを残したい場合は、より風合いを残すために下塗りは微弾性フィラーではなくシーラーを使用する、また塗装ではなく再吹付けを行うといった方法があります。
仕上がりを良くする為に下地処理をしっかり行う
汚れやコケ、旧塗膜などが荒い状態で残っていると仕上がりにも影響します。高圧洗浄やケレン作業を行なって表面を綺麗することが大事です。
塗料の吸い込みが多いので塗料や施工期間は余裕を持つ
モルタルの仕上げは塗装を行う時に塗料の吸い込みが非常に多いという点があります。吸い込みが多いということはその分塗料も大量に消費します。
施工に手間が掛かるので塗料は余裕を持って準備しましょう。施工期間も手間がかかることを見越して余裕を見た設定をしましょう。
膨れ防止の為に透湿性の高い塗料を使用する
モルタル下地の外壁は湿気による塗膜の膨れが起きやすいため、透湿性を持った塗料を選定する必要があります。
ジョリパットやベルアートの左官仕上げの場合は専用塗料を使う
ジョリパットやベルアートなどの左官仕上げの塗り替え時には、適切な塗料の選定が難しいため、それぞれジョリパットフレッシュ、アートフレッシュという専用のメンテナンス塗料が販売されていますので、それらを使用することをオススメします。
吹き付けの場合は吹きムラを起こさないように施工する
吹き付けガンを使った場合、人の手で行うために特に経験が浅い職人が行うと吹きムラが出る場合があります。
対策としては、ガンを使うときに手首を動かして塗るのではなく、腕をしっかり固定して壁との距離を一定に保ちながら吹き付けていくことが大切です。
しかしこれらの作業は熟練した技術であるため、何よりも経験を積むことが大事です。
モルタル下地の外壁の劣化症状
モルタル下地の外壁塗装を行う必要があるのかは、劣化症状から判断すると良いでしょう。
この章では自分で判断できる劣化症状の判断方法、メンテナンスについてお伝えします。
これらの症状を放置すると建物内部に雨水が浸入し、劣化や腐食が進んでしまう恐れがあります。
これから紹介する症状が出ている場合は早めにメンテナンスを行いましょう。
モルタル下地の外壁劣化症状とメンテナンス時期
モルタル下地の外壁劣化症状
モルタル下地外壁の劣化症状は主に次の4つがあげられます。
塗膜にごく細いひびが入るヘアークラック、下地がひび割れる構造クラック、壁全体にチョークのような細かい粉がふくチョーキングです。
特に目につきやすい劣化症状はひび割れ(クラック)で、特に破風や外壁を横に走るひび割れは雨水を含みやすく、下地を早く傷めてしまいます。
水の浸入や湿気が原因で、塗膜剥離や浮きが発生することも。
浮いたモルタルを長く放置しておくと、外部要因(地震等の揺れなど)や自然にモルタルが落下することもあり、大事故に繋がる恐れがあるので危険です。
症状 | 状態 | |
---|---|---|
ヘアークラック | 幅0.3mm以下、深さ4mm以下のクラックのことです。 建物の構造、鉄筋へのサビをもたらす心配は無いので早急に補修する必要はありません。 | |
構造クラック | 幅0.3mm以上、深さ4mm以上のクラックのことです。 構造クラックから雨水が入り込み、鉄筋を錆びさせる原因にもなるので補修が必要です。 | |
チョーキング | 外壁を手で触ると、白い粉状のものが付着する状態です。 塗膜表面の樹脂が劣化、分解されてしまい、“塗装の膜”による耐水効果が失われているサインです。耐水効果の失われた壁からは、建物内部へ雨水が染み込んでいきます。 | |
浮きや剥がれ | 経年劣化によって付着力が低下し、塗装が浮いたり、剥がれた状態です。 ここまで劣化が進行すると外壁を保護する機能がない状態です。早急に補修が必要です。 |
メンテナンス時期
下地に上記で紹介したような問題がなければ、10年前後ごとにメンテナンスを繰り返すことで性能を長く保ち続けることが可能です。
劣化症状ごとの対処方法
ヘアークラック
弾力がある下塗材をひび割れ内部にすり込み、隙間を塞ぎます。
構造クラック
弾性のある充填剤や塗料を塗り込んで対処します。
ひび割れに沿って外壁をU型(V型)にカットし、その溝内にシーリングや弾性のある充填剤を充填します。
チョーキング
劣化の症状ですので、塗装の塗り替えを行なう必要があります。
浮きや剥がれ
浮きや剥がれている周囲を可能な限り綺麗に取り除き、洗浄します。清掃後、補修を行ないます。
劣化の状態によっては壁面全体を撤去・復元する必要があります。
塗料の選び方
モルタルのメンテナンスには塗り替えが一般的です。
モルタルはひび割れが起きやすいので、モルタル下地外壁の塗装時にはひび割れを覆うことができる弾性塗料が使用されます。
単層弾性と複層弾性の違い
塗装の施工方法は単層弾性と複層弾性、下塗りに微弾性フィラーを使用する方法があります。
それぞれの特徴は下記の通りです。
弾性塗料の種類 | コスト | 耐久性 | 特徴 | |
---|---|---|---|---|
単層弾性塗料 | 安い | ◯ | 高弾性の塗料を上塗りに2回塗ることで弾力をつける工法です。工程は下塗り、上塗り2回の3工程です。複層弾性よりもコストが安く済みますが、一般的には複層弾性よりも耐久性は劣ります。 しかし、近年では単層弾性でも複層弾性並の性能を持つ塗料も登場しています。 | |
複層弾性塗料 | 高い | ◎ | 中塗りに高弾性の塗料を2回塗り、上塗りに別の種類の塗料を塗る工法です。上塗りに自由なグレードの塗料を塗ることができるというメリットがあります。工程は下塗り、高弾性中塗り2回、上塗り2回の5工程です。耐久性は高いですが、工程も多く手間がかかるため、単層弾性よりもコストはかかります。 | |
微弾性塗材 | 安い | △ | 下塗りに微弾性フィラーという弾性のある下塗り材を塗り、上塗りを2回行う工法です。複層弾性と同様に上塗りのグレードを選べるというメリットがありますが、下塗りは微弾性のため、耐久性は他の工法より低くなります。 |
単層弾性でも複層並の性能を持つものがある
一般的には単層弾性よりも複層弾性のほうが耐久性が高いですが、単層弾性塗料でも複層弾性並みの性能を有する塗料もあります。
非常に高い弾力性を持つ塗料は単層でも複層弾性並の性能を発揮します。
複層弾性並の性能を持ちつつ、複層弾性よりもコストが抑えられるため、メリットの高い塗料と言えるでしょう。
DIYで費用を抑えたい!手順・準備物・注意点のまとめ
この章ではDIYでも行える、モルタル壁の塗装方法と補修方法をお伝えいたします。
モルタル下地外壁の塗装方法
塗装しないところを養生シートで覆います。
塗膜が剥がれかけているところを綺麗に剥がします。
接着剤のような役割を果たすシーラーと塗ります。
パテで表面の段差を綺麗に整えます。
さらにサンドペーパーで綺麗にします。
さらにパテ処理を行なって段差を綺麗にします。
さらにサンドペーパーで綺麗にします。
上塗り密着用のシーラーを塗ります。
アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素などの上塗りを塗ります。
乾燥したら再び上塗りを塗ります。
養生を剥がしたら完成です。
DIYでひび割れを補修する方法
まず、ひび割れの幅が1mmを超えるものについては、外壁の下地や構造部分にも影響が出ている可能性があるので、自分での補修はお勧めできません。早めに専門業者に劣化診断をしてもらいましょう。
DIYで補修をする場合、ひび割れの幅が0.3mm以下のヘアークラックのみ補修しましょう。
ヘアークラックの補修方法
微細なセメントの粉をひび割れに塗布し、適量な水分を加えてセメントの粉を定着させる方法と手に入りやすい補修材を使った方法として、「シーリング材」を使った補修方法があります。
・チョーク式
セメントチョークを手で塗りこんでいく方法。無駄なくセメントを使える一方で、適度な圧力を加えないと外壁に定着しづらいため、作業時間が長く、体力が必要。
・シーリング材を使った補修方法
シーリング材の施工は晴天時に行なってください。雨で接着面が濡れているとシーリング材が接着しません。また、前日に雨か雪が降った場合は、作業前に補修箇所が十分に乾燥しているか確認をしましょう。
- 施工箇所を洗浄する
- 養生テープを貼る
- 下地材(プライマー)を塗る
- シーリング材を充填する
- ヘラで成形する
- 養生テープを外して、完全にシーリング材が乾いたら補修終了
DIYに必要な準備物と費用について
■ひび割れ補修
方法 | 準備物 | 費用 |
---|---|---|
チョーク式 | セメントチョーク | 1kg 約200円~ |
スプレー式 | セメント粉 | 25kg 約570円~ |
シーリング材 | シーリング材 | 330ml 約400円~ |
まとめ
いかがでしたか?モルタル自体は防水性が低いため塗装による防水の効果が切れる前にしっかりとしたメンテナンスを行うことが大切です。
モルタル下地には仕上げ方法がいくつかあり、塗装方法も異なるということに留意しておいてください。
DIYで行う場合はコストの面ではメリットがありますが、仕上がりはあくまでDIYレベルになるというデメリットも考慮して行なってください。
この記事を参考にモルタルの外壁塗装を行なっていただけると幸いです。
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